1年半で中学受験 2022 とその後

都内私立小に通い小6秋までSAPIXに通塾した男子の中学受験とその後。小5 8月、母親(私)が仕事を退職し中学受験の伴走を開始。小6 12月、SAPIX退塾、2022年外部受験。栄東中進学。

無理のない中学受験


「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」という理由で小学生の柔道の全国大会が廃止になった件に関し
「素晴らしい決断」としたオリンピア為末大氏のインタビュー記事が、3月28日の朝日新聞に載っていた。

これを読んでいて、私の中では昨今の首都圏における中学受験と重なるところがあった。


「小学生の段階で勝負にこだわり過ぎるのは危険」という為末氏は、指導法の問題点も指摘している。

「選手に常に『これはどう?』と聞くのはめんどくさいですよね。会社の教育もそうかもしれませんが、早く育てようと思うと、『いいからやれ』が一番きくんです」
「でも、長く、高く育てようと思うと、それが弊害になり、自分でどうしたらよいのかを考えられない選手になってしまう。」*1


我が家の息子は小学校受験も経験している。
幼稚園時代の後半には幼児教室に通っていたし、直前期には受験塾に通った。

なぜか息子は小学校受験に関しては成績が非常に良かった。
模試を受ければ1位とか悪くても5位くらい。

直前期に通った受験塾というのは学校別になっている有名な幼児教室(よく「J」と略されている)で、合格率が非常に高かった。
その塾は保護者参観(参加)型。
ペーパーの授業も体操も、保護者は教室の後ろでその様子を参観できる。

その塾で年長の夏期講習に参加させてもらったとき、そこはさすがに高度で
毎日最後に行われるテストで初めはなかなか良い点が取れなかった。

でも私も、毎日その授業の様子を端々まで見ている。
当時の私は非常に "熱心" な母親だった。

小学校受験の問題文は紙に印刷されておらず口頭のみなので
先生の仰る問題はすべてノートに書き、息子の様子も出来も先生の解説も、後で息子に伝えたいことも整然とそこにメモしていた。

私は大人なので授業の意図が俯瞰できるし、教室の後ろで全体を客観視しているから
家に帰ればその日の授業のポイントを息子に明確に伝えることができ、「こうしたほうが良い」とアドバイスでき、適切な復習が展開できてしまう。
誤解を恐れずに言えば "訓練" できてしまう。

こうするだけでその夏休みの後半にはグンと成績が伸び、9月後半にあった学校別模試で息子は1位だった(詳細に言うとペーパーは2位、ただ体操や行動観察等により総合的に1位)。
小学校受験では、子どもを合格「させる」のは容易だった。

我が家がその塾に通ったのはほんのわずかな期間だけだった。
しかしその後小学校以降の学習を始めてみて「あの日々は長い目で見て本当に良かったのだろうか」と私は懐疑的に内省するようになった。

その塾には年長の春期講習と夏期講習、それから直前の2ヵ月通っただけだ。
そして、状況を見ていて、まず不合格になることはないと分かっていた。
でも私はとりあえず合格できるようにと試験に合わせた "練習" を「させた」。


「小中学生で結果を残そうとすることで、どんな弊害がうまれるのでしょうか。」と問われた為末氏はこう答えている。

「例えば、野球のリトルリーグでは相手の守備はそこまでうまくありません。地面もでこぼこしている。活躍しようと思えば、ボールを地面にたたきつけると、ヒットの確率が高くなります。でも、そういう打ち方を覚えると、守備が整備された高校野球では伸び悩みます」*2


中学受験が視野に入ってくる時期に私が少々離れて見るような接し方しかしなかったのは、そのような過去の経験や懐疑的な思いがあるからだ。

逆に、一人 "裸" になった息子が、講義や文章を自身では適切に解読・理解できなかったり、自分一人では思うようにその "坂道" を上れなかったり、
あるいは私自身がちょっと手助けしようと思ってももはや適切に救いあげることができなかったのも、
私たちが長期的観点から見て適切な幼少期を作り上げることができていなかったことを表していると思っている。


そんな日々の中、息子自身はよく言えば非常に穏やかで、競争意識が低く随分マイペースな性格であるということが認識できた。
そんな息子なので小6以降はSAPIXとの相性がどんどん悪くなっていったように思う。

息子を介してその様子を眺める私も、その環境は随分と競争を煽るなぁという気持ちにはなった。

「目先の勝ちを拾おうとする誘惑は常にあるんです。自分たちはそうではなくても、勝つことを第一にしているチームと対峙すると、『負けないようにうちも』とか『子どもがやりたいと言っている』という流れになる。結果が出れば、ほら全国で勝てた、となる。プロテインを飲もう、筋トレをしよう、とどんどん加速していきます」*3


中学受験のことを「課金ゲー」と表現されることもあると知っている。
また塾に通いながら家庭教師や算数専門塾など、ダブルスクールする人も多いことを知っている。

私には上記表現が、過熱する首都圏の中学受験と重なって見える部分があった。


為末氏は、日本では勝ってスポーツが大好きになった人以外は大嫌いになる傾向があると指摘する。
勝てると周囲の大人は興奮するが、勝てなくなると「努力が足りない」と見なされて辛い思いをし、潰れていく子がたくさんいると。

そして勝ち負けではないモチベーションを見つけるのが大事だと説いている。
為末氏自身は「どうやったら速く走れるか」という好奇心がモチベーションの半分で、それが最後の支えになったと述べている。


中学受験における勉強は、小学生の子どもたちがゲーム感覚で勝ち負けを楽しく競っている部分があり、
そうであるからこそ、大変だとか辛いなどと感じるよりも仲間との切磋琢磨に喜びが見出され、成長を促し伸びていく部分があるように思える。

そうすることで学ぶ楽しさを見出す人もいるだろうし、そもそも我が家の息子とは違って非常に優秀なお子様はたくさんいらっしゃり、くだらない勝ち負けに拘泥するのではなく、刺激し合い切磋琢磨し才能を輝かせる場にもなっているだろう。

ただ、昨今日本の国際競争力が低下しているのは明らかな事実だ。*4  また既成の概念に囚われない自由な発想に乏しい社会であることも否定できない部分があると思う。

競争により学ぶ楽しさを知る子どももたくさんいると思うが、
無理な目標設定をせず、仲間や周囲の大人との信頼関係の中で自身の自己肯定感を高めながら
その後の生活や将来への大きな夢を抱きつつ、本質的なモチベーションに導かれて努力できる力が得られれば素晴らしいと思う。


ちょうどその日の新聞の他面には、10期連続で最高益を更新したワークマンの土屋哲雄専務の話も載っていた。

最近は「ワークマン女子」などという言葉が生まれるほど客層を拡大しファンを増やしているワークマンだが、土屋専務は社員をノルマでしばりつける経営を「昭和型」と批判し、「頑張らない経営」に取り組んで来たと言う。

「過大なノルマは一時的に売り上げが伸びても結局、長続きしない。無理に頑張り、達成してしまう社員の方がむしろやっかい。その人が代われば売り上げが戻ってしまうからだ。みんなが自然体で成長できる道こそ経営者は考えるべきだ」*5


一つだけ掲げた目標は「短期的な売り上げ増を狙う」ものではなく「『客層の拡大』という長期目標」だったと言う。
その上で社員の給与を引き上げると社員のやる気は格段にあがった、と。


息子はもうすぐ中学生。相変わらず課題もたくさんある。
でも今の私は思う、「一緒に歩いて行こう、お互い自然体で成長できる道の上を、長期的な広い視野に立って」。

 

にほんブログ村 子育てブログ 子供の教育へ   にほんブログ村 受験ブログ 中学受験(サピックス)へ    にほんブログ村 受験ブログ 中学受験 2022年度(本人・親)へ

nakataka.info

nakataka.info

nakataka.info

 

*1:朝日新聞2022年3月28日(月)朝刊13面

*2:同上

*3:同上

*4:https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20211007.html

*5:朝日新聞2022年3月28日(月)朝刊25面

当ブログでは Google Analytics を利用して、アクセス解析を行うため にcookie を使用しております。
Google Analytics で集計したデータは当ブログのアクセス解析や改良、改善のために使用させていただくものとします。
なお、cookieは個人を特定する情報を含まずに集計しております。
Googleによるデータの使用については ポリシーと規約 をご覧ください。