最近、息子が「世界が広がる」とか「自分の世界は狭い」とか言ったことが
私には印象深かった。
「英語が分かると世界が広がるなぁ。」
以前からスター・ウォーズの好きな息子が、ある日「あ、今なら読めるかも。」と言って、思い立ったように書棚から一冊の本を取り出して来た。
それは『The Art of Star Wars Galaxy's Edge』という本で、去年のお誕生日に息子からの要望で購入したものだった。
そこには、スター・ウォーズのアトラクションを造る前段階で創作されたコンセプトアートあるいはデザインプランの画像が多数掲載されている。
英書なので当然添えられた説明文はすべて英語だ。
絵を描いたりすることも好きな子なので、そこに収められた絵の雰囲気が好きでこれまでもよくそれを眺めていた。その本を前向きに置いて飾っていたこともある。
今では中学生になり英語をしっかり学び始めてしばらく経ったため、息子としても英語が少しわかるようになってきた、英語が好きになって来たという気持ちになっているだろう。
大好きな本の説明部分は読めれば嬉しい。しかしこれまでは全然読めなかった。
でももしかしたら、今ならあそこに書かれた英語が読めるかもしれない、と思ったようだ。
そして前書きや各キャプションの文章を読み始めた。
私にも何度か「どういう意味?」と尋ねてきた。
(ちなみに私にはスター・ウォーズの背景知識がない・・・。)
まだまだ簡単に読むことはできないけれど、息子は「英語が分かると世界が広がるなぁ。」と感慨深そうに言っていた。
「単語を増やさないと読めないね。」とも。
息子は、アメリカにあるディズニーランドのスター・ウォーズ・アトラクションを紹介した動画をYouTubeでも好んで見ている。
また最近スマホではスター・ウォーズのアプリ(?)をチェックしていて、ときどき私にその意味を尋ねてくる。もちろんすべて英語。
外国語は世界への窓とも言う。
一つの外国語を学ぶことで世界が広がると感じたことは意義深いことだ。
好みや興味は勉強のモチベーションにつながって行く。
こういったところからでも息子の世界が広がって行けば良いなと感じた。
「自分の世界は本当に狭いなぁ。」
ある日一緒に国語の読解問題に取り組んでいる際に、息子がしみじみと
「こういうのを読んでいると、自分の人生は…というかぼくの世界は、本当に狭いなぁと思う。」と言った。
読んでいたのは、畑村洋太郎著『失敗学のすすめ』の短い一節。*1
そこでは、創造的な仕事をする上で身につけておきたい知識は「陽の世界の知識」、つまり成功体験ではなく、「陰の世界の知識」、つまり失敗経験だと述べられていた。
失敗そのものに負のイメージがつきまとい失敗体験は情報として積極的に伝達されないが、本来失敗は成功を生み出す「もと」であり「母」であると。
失敗体験を知ることで人と同じ失敗をする時間と手間が省かれ、一ランク上の創造の次元から企画がスタートできると説かれる。
また、対比として、「正しいやり方」だけを学んだ学生たちが身につけた知識は表面的で、それではパターン化された既成の問題にしか対応できず、課題設定能力や創造的な仕事の遂行能力に課題がある、と説明される。
これを読んだときに、息子が唐突に、そして妙にしみじみと「自分の世界は本当に狭い」と言い出したので、私はちょっとびっくりした。
自分は表面的に「正しいやり方」だけを聴いて学び、パターン化された設問にしか対応できないと実感したのだろうか。
自分は「こうすれば解ける」と言われたことを表層的にやっているだけだ、と。
最短かつ効果的に見えるルートのみが理路整然と説明された教科書の裏側に、実は人類の長い歴史における膨大な試行錯誤や失敗、回り道が隠されていることを感じたのかもしれない。
もっと多くの失敗体験を知り、そしてまた自分自身も試行錯誤しながら深く本来的な学び(体験)をしていくべきだと思ったのかもしれない。
自分の世界は表面的だが、実際の世界はもっと奥深く広いものであると。
2方向への「世界」の広がり
「英語が分かると世界が広がるなぁ。」と表現したその広がりは、いわば水平方向への世界の広がりで、
「陰の世界の知識」を知って「自分の世界は本当に狭いなぁ。」と表現したその広がりは、言ってみれば垂直方向への世界の広がりであるように思う。
見聞を広げ様々な経験を積んで水平方向に、
そして苦悩しつつも試行錯誤しながら垂直方向に、
私たちは世界を広く、深く学び、成長していくことができる。
様々な文化や生活、考え方や異なる視点、それらを知る成長と、
様々な体験をしたり、一つのことに没頭したりと自分を深める成長。
中学生になって数か月。
息子の成長を感じる言葉ではあり、私はいつも息子の成長を応援していたいと感じた。
そしてまた私自身も、息子のように若くはないけれど、いつまでも成長することを忘れず、広い世界を意識しながら一緒に学んでいたいと思っている。
*1:『新中学問題集(発展編) 中1国語 P.44~45